気づいたら真似されてる…頑張っても報われない虚しさ
「これならいける!」と思って時間もお金もかけて作った商品やサービスが、気づけば他社にも同じようなものが出回っている──。そんな経験はありませんか?最初は注目されていたのに、半年後には似たようなものが安く売られていて、自社の商品が売れなくなる。そのたびに価格を下げたり、広告を増やしたりして対抗するけれど、だんだん疲弊していく…。
こうした「報われない感覚」は、努力やアイデアが足りないからではなく、“真似されやすい構造”の中で戦っていることに気づいていないからかもしれません。頑張るほど他社がヒントを得て模倣する。これはまさに、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けているような状態です。
値下げ合戦から抜け出せないのは市場のせいかもしれない
「なぜこんなに価格を下げないと売れないんだろう?」
多くの中小企業が直面しているこの疑問。その答えは、もしかすると「自社の戦略」よりも「選んだ市場の構造」にあるかもしれません。
例えば、資本金が少なくても始められる、専門知識がなくても参入できる、規制がほとんどない。こうした“誰でも参入できる市場”は、当然ながら競争が激しくなります。新しいプレイヤーが次々と現れ、差別化が難しくなり、最後は価格しか勝負できるところがなくなる──。こうなると、いくら工夫しても「価格勝負に巻き込まれる運命」は避けられません。
重要なのは、「市場に問題がある」と気づくこと。そして、その中でどうやって自社だけの“逃げ道”を作れるかを考えることです。参入障壁とは、まさにその逃げ道のための設計です。
「うちだけの強み」が通用しない理由をちゃんと考えたことある?
「うちは◯◯が強みだから大丈夫」と言い切れる企業ほど、意外と危ういことがあります。というのも、その“強み”が他社から見て本当に模倣困難なのか、時間をかけて検証したことがない場合が多いからです。
たとえば、「職人の技術がある」「社長の人脈が豊富」「地元での信頼が厚い」といった要素は、確かに一見すると頼もしい。でも、それが退職や代替サービスの登場で崩れてしまったとき、どうなるでしょうか?
それらの「強み」が、実は“外的要因に依存していた脆弱な優位性”だったとしたら…。気づいたときにはもう遅く、価格でしか戦えない市場に追い込まれているかもしれません。
強みを主観だけで信じ込むのではなく、「他社から見たらどう見えるか?」「模倣コストはどれだけ高いか?」という視点が、今の時代には欠かせないのです。
頑張ってるのに利益が残らない…その裏にある怖い落とし穴
毎月忙しくしているのに、手元に利益がほとんど残らない──。そんな状況が続いているなら、見直すべきは“収益構造そのもの”かもしれません。
努力や品質向上は確かに大事。でも、どれだけ努力しても、「すぐに真似される」「価格を下げるしか売れない」状態では、売上が出ても利益は残りません。売れても売れても、次の広告費や割引に消えていく。そんな“自転車操業型”のビジネスモデルに陥っている可能性があります。
これが恐ろしいのは、「頑張っている実感がある」だけに、変える勇気が持ちにくいという点です。そして徐々に、利益が出ないことが当たり前になってしまう。これは経営の“習慣的な赤字体質”といえる状態です。
この悪循環から抜け出すには、まず「自社の収益を守る仕組み=参入障壁」があるかどうか、冷静に見つめる必要があります。
参入障壁は“守る”じゃなくて“仕組みで勝つ”ためのものだった
「参入障壁」と聞くと、つい“他社の侵入を防ぐ壁”のように考えてしまいがちです。でも実際には、ただ防御を固めるだけでは意味がありません。重要なのは、他社が真似できない「構造」や「仕組み」をつくって、自社だけが自然と優位に立てるような状態を目指すことです。
たとえば、先に顧客基盤を広げたことでスケールメリットが生まれ、仕入れや物流のコストが下がっていく。あるいは、使えば使うほどデータが蓄積されて精度が上がるツールやサービスで、ユーザーが他社に乗り換えにくくなる──。こうした仕組みは、ただの“商品力”とは異なり、企業全体の設計や戦略で生まれるものです。
参入障壁は守るためだけのものではなく、「勝ち続ける構造をどう作るか?」という問いの答えでもあります。そしてそれは、技術がない会社でも、小規模な会社でも、考え方と設計しだいで手に入れられる武器なのです。
まずは自社がどれだけ真似されやすいか洗い出してみよう
「じゃあ自社にどんな参入障壁があるのか?」と聞かれて、すぐに答えられる企業は多くありません。でも、これを考えることが“勝てる仕組み”をつくる第一歩になります。
おすすめなのは、「自社のビジネスモデルを、他社が真似しようとしたとき、どれだけコストや時間がかかるか?」という視点でチェックすることです。
たとえば──
・自社にしかできない工程があるか?
・関係性に深さや独自性がある顧客・仕入先がいるか?
・使えば使うほど価値が高まるサービス構造があるか?
この“模倣コスト”を洗い出すことで、どの部分が弱点なのか、逆にどこを強化すれば参入障壁になるのかが見えてきます。
完璧な仕組みを一気に作る必要はありません。まずは、模倣されにくい部分を少しずつ増やしていく。それが、長期的な利益と安心を生む土台になります。